働き方改革により、有給休暇や残業時間に大きな変化が起こってきています。美容室経営者は何をすればいいのでしょうか?
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小規模美容室も関係する働き方改革とは
働き方改革とは何なのか?
「働き方改革」の目指すものとして、厚生労働省のホームページには、こう記載されています。
”我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。”
そして、その下には、こう書かれています。
”「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。”
ここでのキーワードは「生産性向上」でしょう。
簡単にいえば、今まで10時間かかって得ていた対価を5時間で得られるよう、考えろということです。
スタッフでは考えられる範囲は限られます。
経営者は生産性を向上させる策(イノベーション)を起こす必要があるのです。
有休休暇の取得について
ここでは、基本的に押さえておかなければならない事を簡潔に書いていきます。
<ポイント>
➢2019年4⽉1⽇から、年に5⽇の有給休暇を取得することが法律上の義務になります。
➢対象は10⽇以上の有給休暇が与えられる従業員です。
(通常、6ヵ⽉以上勤務すると、10⽇間の有給休暇が与えられます)
➢正社員の場合には、6ヵ⽉以上勤務すると、10⽇間の有給休暇が与えられます。
➢パート・アルバイトでも、働く⽇数によって有給休暇が与えられます。
簡単に理解するなら、1年に5日は有給休暇を取らせなさい、ということです。
有給休暇の取得は、従業員の権利ですから、取得理由は何でもいいんです。
「ライブに行くから」「疲れがたまっているから」など、とにかく何でもいいんです。
今までの多くの美容室では「有休」はない美容室が多かったでしょう。正確には、あるのに「取らせない」「取れない雰囲気」などです。
これが、2019年4月から法人、個人事業、関係なく最低5日は取らせなさいと経営者に義務が課されたのです。
参考までに有休取得年数と有休日数です。
有給休暇の付与⽇数(正社員)
勤続年数 | 6ヵ⽉ | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
ここで、細かなポイントは「入社から半年で取得できる」ことです。
なので、1年とは「入社から半年たった日から1年の間」という事なので、中途採用が多い場合は、1年のスタートが従業員ごとに異なります。ご注意ください。(日にちを統一することもできます)
また、有給管理も義務化されています。書面やパソコンで管理しましょう。
従業員が見られるようにしておかなければいけません。就業規則と同じです。
また、有給消化ができていない場合、30万円以下の罰金もありますので、ご注意ください。
残業時間について
次に、2020年4月1日から適用される「残業時間」についてです。
ここで基本的な事ですが、日本では残業は禁止されています。
元々、残業はしてはいけないんです。法律で決まっています。
しかし、ある条件を満たしている場合は認められます。
それが、「36協定」(さぶろくきょうてい)です。
労使間で、これを結んでいる場合は残業が認められます。
美容室ではあまり話題になりませんね。
おそらく、業界的に「修行」という働き方が当たり前だったからでしょうか。
修行中の従業員にとって、美容室のオーナーである「先生」は絶対的存在ですから、先生が言うことがすべてだったもかもしれません。
しかし、それは昔の話です。
➢中⼩企業(従業員数100名以下の美容室)では2020年4⽉1⽇から、残業時間に上限が設けられます。
➢上限は、1ヵ⽉あたり45時間、年に6回までは⽉平均で80時間までになります。
➢違反した企業には罰則(6ヵ⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦)があります。
前述の36協定は労働基準監督署に最長でも1年に1回、提出しなければいけません。
同一労働同一賃金
2021年スタートの「同一労働同一賃金」は簡単に言うと、パートも正社員と同じような労働をしていれば、賃金に差をつけてはいけないというルールです。
美容室ではパートの活用が多くなっているので他人事ではありませんね。
こちらについては、また別で書いていきます。
小規模美容室経営者がやるべきこと
働き方改革のルールをしっかり知る
有給休暇や残業時間などは、美容室経営に限らず、中小企業にとっては頭を悩ますことかもしれません。
しかし、多くの中小企業は対応策を立てています。美容室はどうでしょうか?
以前、社会保険加入が叫ばれていた美容業界ですが、働き方改革でも遅れをとっているようです。
まず、働き方改革のルールを知らない経営者が多いです。
これでは、対応策は練れませんよね。
世間一般の対応策を取り入れて解決する訳ではありません。美容室は生産性が高い業界ではないからです。
単純に営業時間を削り、休みを増やす、これでは売上の下降は避けられません。
かといって、対応しないわけにもいきませんね。
そこで今一度、業務の見直しをしてみましょう。細かく業務を見直すことで改善できることは多くあります。
例えば、美容室での会計は長いですよね。私は常日頃からなぜ、こんなに遅いのかと思っていました。
いろんな理由があると思われます。
・メニューが多すぎて、アシスタントがスタイリストにいちいちを聞きに行く
・クレジット決済などが導入されていない
などなど。
働き方改革について、無料の説明会などが多く開かれていますので、参加するのも一つの手です。
自店の生産性を把握する
生産性が高ければ、慌てることはありません。従業員が働きやすくなるのですからいいですよね。
まずは、自店の生産性を知ってください。
よく使うのが、従業員一人当たりの売上です。最低限55万円以上はほしいですね。
働き方改革では、時間がキーワードです。
残業時間も有休も時間なんです。
1分単位の生産性を把握しましょう。
目安は120円/1分です。これを下回ってはいけません。
小規模美容室は、時間単価を削ってはいけません。安く設定するなら、それでも利益が出るシステムが必要です。
例えば、セルフサービスの導入などです。
しかし、フルサービスを希望するお客様は一気に離れてしまうでしょう。
よく考えて導入しなければなりません。
まとめ
多くの美容室はトラブルが起こってから、後悔することが多い「労使間の問題」
あなたは対策できていますか?
「労使間の争い」は美容室の経営そのものに直接、影響を与えかねません。
修行感覚を捨てて、経営者として何をすべきか早急に行動すべきでしょう。